レモンドロップス。

倉本さんはあたしのひと言ひと言をかみ締めるようにうなずきながら聞いていた。

「いいですね、青春時代だね。・・・ってこんなことを言うと年寄りくさいですかね」

笑うと深くなる目尻のしわを見ていて、あたしは心のどこかで戸惑っていた。


陽斗を、いずみちゃんを、陽斗のお母さんを深く傷つけた人があたしの目の前で笑っている。

だけど、その姿は暖かい父親そのものに見えた。

どっちだろう、いったいどっちが本当の倉本さんなんだろう・・・。


「確かにそうですね・・・。戸田君と出会えて、なんか『青春』してる感じがします。戸田君を通じて、いろんな人に出会えましたし」

頭の中にふと、いずみちゃんの顔が浮かんだ。

でもここで、夏の事件のことは絶対口にしないと決めていた。

いずみちゃんのため、菜美のため、そしていずみちゃんの家族のために。


「あの子は宮崎さんにそんな喜びを与えているんですね。そういう男に成長したと言うことかな」

倉本さんの言葉にハッとした。

穏やかな表情は変わらないけれど、眉や口元は苦い影のようなものが確かに浮かんでいる。

「私はあの子やあの子の母親に、喜びを与えることができませんでしたから」


その顔は笑っている、けれど誰のことを笑っているのか、分かるような気がした。



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