レモンドロップス。
いつの間にか、窓の外からは日の光がすっかり消えうせている。
小さな照明が灯された庭は枯れ木と落ち葉ばかりで、なんだか見たことがないくらいさみしい景色に思えた。
「今でも陽斗には会っているんですか?」
あたしの一言に、倉本さんはコーヒーカップを持ち上げかけたままピタリと動きを止めてしまった。
まるで言葉が魔法をかけたように。
「別れた後もしばらくは会っていました、でも前の妻が亡くなってからはほとんど会っていません」
いや、そう言って倉本さんは首を振った。
「かっこつけました。本当は会うのを拒否されてるだけなんです」
大人の男性という最初のイメージと全然違う、とても素直な言い方だった。
思わずひきつけられそうになって、同時にちくりと小さな反発があたしの胸をつつく。
「入院してから、陽斗のその気持ちはどんどん強くなっているみたいです。気持ちが増殖して、陽斗の体中を蝕んでいるような気がしてます」
倉本さんへの小さな反発心があたしの言葉を尖らせていた。
―――こんな陽斗をどう思っているんですか?
「私と会った直後だったわけで、あのまま陽斗にもしものことがあったら、私も生きていくことができなかったかもしれません」
低音がよく響く倉本さんの声が、初めてかすかに震えた。
ようやくソーサーにおろしたコーヒーカップがカタカタ音を立てている。
「自分があの子にとって憎しみそのものだということはよく分かっています。それでも・・・」
あたしは息をするのも忘れて倉本さんの言葉に耳を澄ませた。
外の木々も、静かにあたしたちを見つめている。
「今度こそ、陽斗と向き合っていきたい。今度こそ逃げないで。それが私にできるたった一つのことだと思っています」
その瞬間、倉本さんの視線は宙をさまようことをやめ、真っ直ぐにあたしを捕らえた。