レモンドロップス。
「本当にすみません。こんな遅くまで付き合わせてしまって」
「3回目ですよ、それ」
大の大人が小さく謝る様子がおかしくて、あたしは思わず笑ってしまった。
「あ、すみません」
と、またもや倉本さん。
フフッという2人のかすかな笑い声が静かな歩道に淡く響いた。
話し終わって病院を出るとあたりはもう真っ暗。
あたしは近くだからと言ったけれど、倉本さんは心配だから送るといって譲らなかった。
そんな優しさが嬉しくて、そして陽斗を思い出して空気の冷たさがじわっと胸にしみた。
「宮崎さん」
「はい?」
倉本さんが静かな目をしてあたしを見ていた。
「陽斗はあなたに優しいですか」
「はい」
あたしはすぐに答えた。
陽斗は優しい。
本当は優しい、それをあたしは信じてる。
今までも、これからも。
「そうか、良かった・・・」
「倉本さん・・・」
独り言のように、倉本さんは道の向こうに目をやりながら呟いた。
「恋は大きな川のようだな、と思うんです。一度流れに身を任せると、あっという間にそのうねりにのまれていく」
あたしもつられて、道の向こうを見つめた。
点々と続く街灯は、みずたまりのような光を歩道に落としている。
「私は弱くて、その川をうまく渡り切れなかった。その結果、たくさんの人を傷つけ、
失った」