レモンドロップス。
―――大きな川があたしたちの目の前に突然現れる。
―――手を抜いたりよそ見をしたりすると、足元をすくわれてあっという間に溺れてしまう。
―――それが恋のかたち・・・?
あたしは、自分の恋のかたちなんて、考えたこともない。
でも倉本さんがそう言いたい気持ちは、なんとなく分かる気がした。
「私は陽斗とあなたの恋についてどうこう言う資格はありません。でも、2人なら手に手を取り合って、うまくこの川を泳ぎきると信じています」
やっと視線をあたしに戻すと、倉本さんははっきり言った。
「2人の幸せを祈っていますよ。これからも、ずっとずっと見守っていくつもりです」
なんとも言えない気持ちがあたしを包んだ。
陽斗にこの言葉を聞かせたいような、そうじゃないような、甘さと苦さが入り混じった気持ちが。
「そして許されるなら陽斗に・・・」
そこまで言うと、倉本さんははっとしたように口をつぐんだ。
自分を戒めるように、固く閉じた口元。
「いやいや、ちょっと話しすぎましたね」
「いえ、たくさんお話できて良かったです」
あたしが見上げると、倉本さんは困ったような笑みを浮かべた。
「宮崎さんとお話していると、つい話し過ぎてしまう。こちらこそありがとう」
と、あたしは足を止めて、曲がり角を指差した。
「そこがあたしの家なんです。ここで大丈夫ですから」
「遅くなってしまって、本当にすみませんでしたね」
「今日は断ってきたし、部活もけっこう遅くなりますから」
笑ってあたしが言うと、ちょっと安心したように倉本さんは、
「ありがとう。今日は宮崎さんに会えてよかったです」
頭を深々と下げた。