レモンドロップス。
その日のホームルームで、陽斗の転校が健にぃからクラスのみんなに知らされた。
驚いている人と無反応の人が半々くらい。
怪我でずっと入院が続いていたから、陽斗の不在は教室の中で目立つことがなくなっていた。
肌で感じるその雰囲気が、あたしをいっそう寂しくさせる。
「突然の転校で驚いてると思うけど、怪我の治療のためだからみんなも応援してやってな。それから来週は新学期最初の学力テストがあるから――」
えーっ、うわ忘れてた、そんなざわめきで教室は一気に活気付く。
まるで陽斗のニュースなんてなかったみたいに、あっけなくその活気に埋もれてしまった。
みんなの声を無視して話し続ける健にぃが目の端であたしをチラリと見た。
その視線にチクンと胸が痛くなる。
「俺も突然上から言われたから、あいつの転校先をまだ知らないんだよ。聞いてみるから待っててくれ」
小さい子どもをなだめるように、健にぃは朝の昇降口前でそう言った。
たぶんあたしはお預けをくらった子どものような顔をしてたと思う。
自分のことしか考えてない、わがままな子ども。
その時健にぃが何を考えていたのか、思いもしなかったんだから。
仲のいい友達はなんとなくあたしたちのことを察してか、陽斗の転校に深く突っ込んでこなかった。
でもそれほどの仲でもない友達は、机の周りに集まって遠慮なく突っ込んでくる。
どこに転校したの?
怪我は大丈夫なの?
遠距離恋愛は大変だね。
本当のことは言えなくて、ただ笑いながら適当なことを言ってごまかしている自分が情けなかった。
空っぽの心にどんどん水が流れ込んできて、おぼれそうだ。
その時、こんこんとリズミカルに肩を叩かれた。
振り返ると女の子たちより頭一つ高いところに、深刻そうに眉を寄せた顔がある。
「乾くん・・・?」
「ちょっといい」
乾くんはそう言うとスタスタ教室を出て行くので、あたしはあわててその後を追った。