三つの月の姫君
「そういえば一般公開する際にあちこち修繕していましたもんね。それで費用が足りなくて一時作業は滞っていたようですもんね」


「くわしいな、おまえ」


「実は僕は公開を楽しみにしていた一人なんですよ。まさか修繕前のクインキャッスルを目にするなんて思いもよりませんでしたが」


(面接のとき言わなかったかな?)


 青年は思案する。


 雨はしとしとと壁を濡らしてゆく。


 が、内に至れば風が吹くだけだ。

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