天翔る奇跡たち


 あたしは岩の影に伏してそれを見た。通った鼻筋としゅっとつぼんだ小鼻と紅の瞳の輝き。弓なりの眉。なんと凄絶な美貌……これがドラゴンのクイーンなんだ!

『約束を……くれてやったというのですか。この、汚れた猿共に!』

 さ、猿ぅ? あたし達が? 汚れてるっていうのは……そりゃ汗みどろだけどさ。それだって任務だからなんですう! まるで心まで汚れてるみたいに……こちらはディノーディアさんからサインだってもらってるし、いろいろ助け合ってきたんですう!

 まあ、飛んで降(くだ)って、走って逃げただけだけどさ。もう仲間くらいには思ってるよ。こっちは!

 大体、こんなふうに全員びしょびしょになったのだって……ううん、そんなの八つ当たりだってわかってる。



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