天翔る奇跡たち
と、思っていたら、ぱしゃぱしゃ足場の悪いところを器用にやってきてべろん、と謄本を開いて見せた。
「サインないよ。こっち。もう一つの方は? 契約にサインなかったらここまできた意味がないよ」
なんてこと! あたしの手落ち? おかしい。今までこんなこと一回だってなかったのに。 どうしてこんなことに……あっ。
「サインもらったはず……でもその後の記憶がない」
「気絶してたんだよ、アップル。竜の里のドラゴン・ブレスいっぱい吸い込んじゃってた」
あー……あ、思い出した。ちょびっと、うっすら。つ~んとくるあの毒気に当てられてえ、もう一つの控えをとってなかった、と……失敗。なんという失態! 大失態だ!
どーしよー! 泣きたい気分。派遣なんて割に合わないわけよ。