天翔る奇跡たち


 竜の里に行けって言われること自体、そのまんま、死ねって言われてるようなものだったしー

 め、めげる。でも、何でそんな仕事を引き受けたかというと……みんなのご飯代を稼ぎたかったからなのよ。

 この商売、ご飯だけはめちゃめちゃ食べるのよ。いつ危険な目に遭うか、わかんないからね。飢餓状態もそのうちの一つ。

 なんだかねー、たたかうひとはめちゃめちゃ食べる。グリフなんかもそう。あのにこにこ顔でどーんと巨大なお皿を空にする姿は頼もしいわけよ。それで彼を気に入った女の子がこれまたどーんと奢ってくれる。

 彼に関してはそこも助かってるし、こちらの懐だって、イッコも痛まない。うれしいよ、グリフがハンサムで。

 だれも知らないところで弱音吐く癖はあるけれど。これ、内緒。あたしが知ってるってことも。あと、グリフは自分以外のひとが傷付いているのを見るのが苦手。そのせいなのかはわからないけど、応急手当は人並み以上。

 包帯以外の医療キットは充実してる。知識も豊富で医者になったら良いのに。でも本人は自分のこと、「オタクなんだ」なんて言ってる。それって、なに? なんてつっこむ気も起きないくらい立派なものだ。



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