天翔る奇跡たち
 

 あたしなんかは、初め驚いて、奇矯なモノを見たという態度を隠しきれなかった。

「足音や甲冑の下に着る帷子(かたびら)が鳴る音がする。近づいてきている」

 ドロップスが泣くかと思ったけど、彼女はきりりと口を引き結び、辺りに注意を払ってる。あ、コヨーテの目だ。

「しょーがない、お仕事、おしごと!」

周囲はさきほどのやりとりなど、知りませーん、と言わんばかりのナチュラルさ。にぎわい方なんだけど、なんか、そちらの方が不自然じゃない? みんなに竜の姿の彼女が見えなかったわけじゃあるまいし。

 だけど、そうだな。一応明記しておくと、別にここのひとたち、なにか外の世界に不満があって集まっているのではないようだ。服なんか黄色と黒の組み合わせだとか、緑と紅だとか派手。まるで派手はでの見本市だ。

 実際、市があってひとの行き来も多いようだ。不思議。

 となると、さっきみたいな大立ち回りは厳禁。結構不気味だが、蹴散らすわけにもいかないし。一体、どこからこんなにひとがわいてくるの?


ううん、もうわかっている土の王宮からだ。



< 85 / 225 >

この作品をシェア

pagetop