天翔る奇跡たち
あたしなんかは、初め驚いて、奇矯なモノを見たという態度を隠しきれなかった。
「足音や甲冑の下に着る帷子(かたびら)が鳴る音がする。近づいてきている」
ドロップスが泣くかと思ったけど、彼女はきりりと口を引き結び、辺りに注意を払ってる。あ、コヨーテの目だ。
「しょーがない、お仕事、おしごと!」
周囲はさきほどのやりとりなど、知りませーん、と言わんばかりのナチュラルさ。にぎわい方なんだけど、なんか、そちらの方が不自然じゃない? みんなに竜の姿の彼女が見えなかったわけじゃあるまいし。
だけど、そうだな。一応明記しておくと、別にここのひとたち、なにか外の世界に不満があって集まっているのではないようだ。服なんか黄色と黒の組み合わせだとか、緑と紅だとか派手。まるで派手はでの見本市だ。
実際、市があってひとの行き来も多いようだ。不思議。
となると、さっきみたいな大立ち回りは厳禁。結構不気味だが、蹴散らすわけにもいかないし。一体、どこからこんなにひとがわいてくるの?
ううん、もうわかっている土の王宮からだ。