ヤンデレな人たち
 それを言う前に彼女がバッと彼に飛びついて来た。すぐに彼は彼女を受け止める。どうやらよほどうれしかったのだろう。



「そう。あなたが私の夫となる者ですね」



「い、いや。そういうわけでは……。ただあなたを長き目覚めから覚ましてほしいと、あなたの国の者から仰せつかったのです」



 そう言って王子は姫を引き剥がそうとするが、今まで眠っていたとは思えない力で離れるのを拒んでいる。



「普通の人は、こんなところまで私を起こしになんか来ないもの。ここまで来てくれるってことは、あなたは私のことが好きなんでしょ?」



「ぼ、僕は国に結婚を約束している人が……」



 王子は彼女を思い切り突き飛ばして逃げようとしたが、目の前でいばらの壁が出来上がっていた。



「逃げ道はないわよ。だってこのいばらは魔法で出来たもの。私もその魔法は使えるのよ?あなたが逃げ出さないとその身、その心に刻みつけるまでここであなたと二人っきりよ。このいばらの中は私とあなたのスイートホームよ」



 出口も窓も逃げ場のないこの部屋で姫と王子は幸せに暮らしましたとさ。

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