教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

「これじゃあ廊下に話が筒抜けですからね。

ま、いいですけど」


そう言いながら、ドアを閉めようとせずに竹森先生は準備室の入り口で話し続ける。


「深瀬先生、安西先生に彼がいるとは思いませんでした?」


深瀬先生、明らかに驚いている。


けど、一番びっくりしたのは私だ。


何で竹森先生が知ってるの?



「安西先生、私が気づいてないと思った?

あなたに『彼』がいるのはすぐに判ったの。

ほら、指輪!」



はっ!


と思って、左手の薬指を押さえて、またしくじった。


今は外してるのに、なんで?



「指輪って、ずっとつけていたのを外したら、必ずその跡が残るのよね」



薬指は確かに、うっすらと日焼けの跡と、ほんのわずかなくぼみが見えるかも。


す、鋭すぎる。


だって、ほんのちょっとだよ!?



「結婚指輪を外したら、みんなそんな風になるのよ。

跡がつくっていうことは、毎日欠かさずつけている証拠。

結構長くつけていたんじゃない、その大事な『彼』からの指輪。

実習中だから外したんでしょう?」



こくりと、首を縦に振った。



「そういうことだから、深瀬先生は他のお相手を探した方がいいと思うわ。

あと、実習中にナンパされたら、実習生がやりにくくてしょうがなくなるの、解る?

あなたももう少し教員としての自覚を持った方が良さそうね」



深瀬先生も、しょんぼりと頷いた。


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