天使と野獣
だから東条は、あんなに気ままに高校生活を送っていたのだ.
学校で先生に対する話し方も傍若無人、
退学になれば親が何とかしてくれる、式の育ちをしている、
と思っていた。
いや、今でも心のどこかではそんな気持が見え隠れしているが…
しかし今、父親が見せた乱暴な治療方法は…
上手く言えないが、何となくイメージは変わっている。
それに対して自分はただの公務員の家庭。
兄の学費から高校一年の妹の学費、塾の費用、
その上に受験生と言う事で自分の塾の費用がかさみパートに出ている母。
家も… 隣と似たような建売住宅だ。
だから親の期待に応えようと何でも一生懸命にやって来た。
いつも、学級委員として、
クラスメート・東条京介の様子を目にしていた安本は、
隣の部屋で無防備に眠っている東条が羨ましかった。
「いや、わしの父は大工だった。
医者はわしがなりたかったからなっただけだ。」
と、栄は、京介のクラスメートが初めて訪ねて来たと言うことで
話を楽しもうと思っている。
その時、ロビーの管理人から来客を告げるブザーが鳴った。
そしてインターホンに付けられている防犯カメラをのぞくと、
30代ぐらいの男が二人映り、
木頭と佐々木と言う警察官だと名乗った。
「すみません、こんな時間に。
あの… 東条君は戻っていますでしょうか。」
二人は玄関に入ると恐縮した態度で栄に声をかけた。