天使と野獣

その時、しばらく席をはずしていた栄が、
杖にしては少し太い、
布で巻きつけたようになっているモノを持って来た。



「父さん、何だ、それ。」


「お前の杖代わりだ。
堅い物で出来ているから木刀代わりにもなる。

どうせお前もこうして話を聞いた以上黙っては居られないだろう。
しかし、わしも一緒だ。
いいな、京介。」



と、栄はこの後、当然京介が
刑事たちと行動を共にするものと思っているようだ。

だから自分も一緒だと言っている。




「ちょっと待ってください。
これからは我々がきちんと始末しますから、
東条君はゆっくりと休んでいてください。
お父さんも一緒です。

すみません、我々がこんな事で煩わしてしまいまして… 」



と、木頭は警察官としては当然の言葉を出したが… 



「ふざけるな。望月たちもやられたのだぞ。
あいつらは俺のせいでチーズの事を知ったのだ。
あんなことになったのは俺のせいだ。 

このまま手をこまねいて休んでいられるか。
父さん、俺のせいなのだよ。」



さっきまで、あんなに痛がっていたというのに、

一眠りしただけで、
まるでなかったような口調で話す京介。

それどころか、
自分のせいで人が傷付いた、と言う事を強調して、

警察と一緒に行動しようとしている東条京介。


安本は、東条は異星人、
それとも自分が異星人の中に紛れ込んでしまったのか、
としか思えなかった。



「ああ、分っておる。
だからわしも一緒だと言っているだけだ。

木頭さん、これから千駄木にある
廃院した病院へ連れて行ってもらえんかね。

こいつに局部麻酔をうち、
傷口を念入りに綴じて
ダメージを少なくしてやりたいのだよ。

そうすればこいつは強い味方になる。

それに… 奴らにしたらこいつは都合の悪い目撃者だ。
何しろ悪徳刑事を見ているのだからな。

だから犯人を捜すのではなくて、
おびき出したらどうだ。
千駄木の廃院におびき出せば良いのではないか。」



と、いくら何を言っても無駄だと言わんばかりに刑事たちを見て、

栄は思いもよらぬアイデアを考え出している。

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