天使と野獣

まだ進路の決まっていない三年生が多い中、

東大に受かったという京介は
学校中の大評判だったが… 

その行動も興味の的だった。


しかし、当の京介はあれ以来姿を見せず… 
いきなり現われて高橋を呼び出している。

こんな興味深い行動からは目が話せない。



「京介さん… 」


「お前、あの女の家を知っているだろ。
お前と同じところだとは覚えているが、
俺はお前の家を知らん。

面倒だから案内してくれ。」


「女って、和美の事ですか。」


「当たり前だ。他に誰かいるのか。」


「そう言うわけでは… 
でも、あのことは終わったのでしょう。
先生がそう言っていました。
犯人は全員逮捕されたって。」


「犯人は逮捕されたが、
まだ吉岡の気持は終わっていないと思う。」



そんな事を言う京介の気持こそ、
全く理解できなかった直道だったが… 

京介に逆らう事などできない。


まじめな直道、
気が引けたが早退の形をとり、

京介と共に自宅のある公団住宅へと向っている。



「あいつはまだ治っていないらしいな。」


「ええ、いっときのように興奮したりはしないらしいですが、
心に穴が開いているようだ、と
おばさんがうちの母に話していました。」



自分のボーイフレンドが目の前で落下死したのだから、

受けたショックも大きくて当たり前。

そのうちには治る、と言う医者の話を信じ、
直道も含めて周囲の人は待っているらしい。
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