天使と野獣

大学入試センター試験も終わった。

京介の気持では、条件は受けた。

それを果たしたから、後は結果を待つだけ、だ。


確かにまだ授業はやっている。

他の級友達はそれなりに、
自分たちの目指している大学の試験を受けに行っている。


登校しても… 今まで以上に退屈な京介だった。

父が弁当を作るから… 
学校へ来ないわけにはいかなかった。


京介は試験の翌日、自分の受験番号や問題用紙を高木に渡し、
それこそ、結果は見て来てくれ、と言わんばかりに、
あっさりとした態度で職員室を出て行った。


が、学校内でセンター試験に挑戦する生徒はいない、と言う
高校の教師としては、
いろいろと様子が聞きたくて、

高木は職員室を出て行った京介の後を追った。


「東条、少し… 」



高木がそこまで声を出した時だった。



「ウワァー」



と言う悲鳴のような声がして、

二人から10mほど離れた所にドサッという鈍い落下音… 

振り返れば男子学生が頭から血を流して倒れている。



「大変だ。」



高木は慌てて携帯を取り出して救急車を呼んだ。


そして京介は、まず屋上に目を遣った。

すると… 上から一人の女子生徒が顔を出していた。


それを見届けた京介は、
急いで階段を駆け上がって屋上へ向かった。

もっとも、屋上へ上がる階段は一つではない。


もしこれが自殺や事故ではなく殺人なら、
まだ犯人は上にいるはずだ。

上にいる女子生徒が何かを知っているはずだ。


誰に頼まれたわけでもないが、

京介の頭と体は無意識に反応し、
行動に出ていた。


< 41 / 171 >

この作品をシェア

pagetop