蜜に恋して
「はぁ〜?やだぁ!!」
「なんで?昨日は遅くまで楽しんできたみたいじゃない。」
食後のデザートを作りすぎたから陸の家に持って行ってほしいと母であるリカに頼まれた。
(昨日の今日のじゃ喋りづらいよ…。)
「じゃあ蜜の分は没収!陸くんに二つあーげよっと。」
「え!!!?」
目の前には美味しそうなママお手製ショコラのタルト。
「ママ!!私が行くからぁ!!!」
「そ?じゃー蜜もあっちで一緒に食べて来なさい?」
「いやだ」という前に既に蜜の分も箱の中に詰められていた。
ユミとリカが口裏合わせてのことだと蜜は気づくことなく陸の家へと向かった。
ピンポーンとインターホンを押すと、昨日同様ユミママに暖かく出迎えられた。
「さぁ上がって上がって!!」
そういってリビングに通されたのだが、今日は静かだなーとキョロキョロ辺りを見回した。
「…あぁ、蓮は今朝帰っちゃったのよ。ユウは今日から出張で湊は明後日帰ってくるの。陸は何やってんだかまだ帰ってきてないのよねぇ。」
ユミママはすらすらっと言葉を並べながら、箱から二つタルトを取り出した。
(陸が帰ってくる前に早く食べて帰んなきゃ!!)
ユミママ早くそのタルトを私にチョーダイ!!と一心に願っていたが、
運悪く電話が鳴り出しユミママは受話器を取る。と、血相を変えて急にバタバタと何かの用意を始めた。
「ゆ、ユミママ?」
「ごめん蜜ちゃん!!!陸のおばあちゃんが倒れたみたいなの。病院行かなきゃだからごめんだけど家の番しててくれない?陸ってば鍵持ってないのよ。」
早口で蜜にそう告げると、ユミはすぐに玄関へと向かった。
陸のおばあちゃん、もとい自分の母親なのだから。
残された蜜はどうしようもない絶望感に打ちひしがれていた。
(陸が帰ってくるまで待機だなんて…。)
そうなって20分しない内に玄関のドアが開く音がして
「ただいまー」と陸の声がした。
「おっ、おかえり!」
リビングに陸が来たところでそう言うと、「なにしてんの?」と聞かれてしまった。