Love Slave
眼だけを布団から出す。母は掛け布団の上に「渡してほしいもの」を置いて出て行った。
バサッと私の目の前に落ちてきた。


A4サイズの茶封筒。中身が飛び出さぬよう、きっちり封がしてある。重みがあり、厚さもある。
頭をガリガリ掻きながら、封を開ける。白く濁った糊がべったりくっついている。


上から覗くと、何やら本の様なものが入っている。勢いよく、封筒から取り出す。


手書きで、『俺の奴隷専用 テスト完全コンプリートテキスト』と書かれていた。


ズルッとなった。それ以外は何も入っていない。念のため携帯も確認するが、電話もメールも入っていなかった。


「・・・・・・・」


身体がだるくて、何もやる気が起きない。だけど、渋々布団の中から出てくる猫みたいに身体を外に出した。


そして、勉強机に向かう。2週間留守にしていたけど、机の周りは綺麗に片付いていた。母がやってくれたらしい。
ため息をつきながら、カチカチッとシャープペンの芯を出す。


今の時刻は3時過ぎ。結構問題数があるから終わるのは夕飯時になってしまうかもしれない。
でも、すぐに我に返った。


(何会長に乗ってるんだろう?)


あれだけ振り回されたのに。なのに、どうして私は会長の考えに乗ろうとしているのだろう。こんな手作りのテキストなんて用意して、考えが読めない人なのに。


時間がかかるし、別に脅されてもいないし、これを放棄するべきか?本気でそう思った。


グッとシャープペンを握る。気がつくと、一問目を解いていた。全くの無意識で。


「今回だけですよ・・・・・」


私は夢中で会長の問題を解いた。今まで教えられたものばかり。悩む問題もあったが、総て選択問題だった。
ア・カ・サ・タ・ナ、ハ・マ・ヤ・ラ・ワの50音総て。カッコ書きで「同じ記号を何度も使ってもよい」と書かれていたので構わずそうした。



「・・・・・出来た」


結局、全部の問題を解いてしまった。会長の思惑通りになってしまった気もするが。
問題を解いたのであれば、答え合わせをしなければ。


「あれ・・・ない!?」


解答用紙がない。問題はあるのに、答えのページがない。入っていた茶封筒にもない。
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