~天に背いて~<~天に送る風~第二部>


「ボクのも頼む。沼地で汚れてへとへとだよ。全身、爪の中まで泥まみれだ」

 これは女子の耐えうる状況ではない。

 しかも、アレキサンドラは王城でメイドとして働くばかりか、子供らを預かる修道院のボランティアをしてきた。


『乗せるな、これ以上!』

 とは言ってもアレキサンドラはいつでも清潔を心がけてきた。

 なのに今は自分が水性の怪物みたいだ。

 自己嫌悪。

 そのストレスの分がクリスチーネの荷物に荷担される。


『乗せんなってゆーのに、コラ!』
 

 てめーら、ものの加減を知らねーと、いつ竜神様のとこへたどり着けるかわかんねーぞ。

 との脅しも通じない。


「むだだよ、クリスチーネ。私たちにつまらない脅しをかけても」
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