勿忘草
「夢なんてそんなもんだ」
彼は力なく笑う。
そして一つ欠伸(あくび)をしすると、
「…俺…もう少し寝る…」
10時になったら起こしてくれ、と言い残して、彼は再び眠りについた。
私は顔を洗うと、部屋の空気を入れ換える為にリビングの窓を開ける。
そこからベランダに出ると澄み切った青空が広がっていた。
太陽の光はさんさんと街に降り注ぎ、
空気がその光によって暖められて、カラッとした天気。
「いいお天気だなぁ」
そう呟き、笑うと私は居間に戻った。
まだ10時まで時間がある。
総護君、起きたらきっとお腹空くだろうし、朝ご飯…作ってあげたいな。
それが私の仕事…だし…。
けれど一つだけ。
問題があった。
それは私の記憶が無いこと。
当然料理の仕方なんて覚えている筈がない。
これでは料理を作れない。
「どうしよう…」
取りあえず冷蔵庫の中を覗いてみることにした。
そして驚く。
冷蔵庫の中は殆ど食べ物が入っていなく、中にはミネラルウォーターや、お茶などの飲み物類と、
林檎などの果物と、卵が入っていた。
そういえばごはんはいつもお弁当や外食だって言っていたし…
彼は料理を全くしないみたいだ。