幕末異聞
土方から恨まれている事など露知らず、楓は身なりを整え道場に向かっていた。
少し離れた場所からでも足を踏み込む音や掛け声が聞こえる。
(朝も早よからご苦労さん)
道場に入ろうと戸を開けると、一斉に隊士達が楓に注目した。
(めっさ入りずらいやん…)
意を消して道場内に入る。
隊士達の視線が気になったため、俯きながら竹刀の置いてある場所を目指す。が、その途中で何か硬いものに頭から突っ込んでしまった。
「ぐはっ!」
慌てて目の前のモノが何なのか確認する。
そのモノは、縫い目のような横に伸びた直線があり、その他にも何かで切った痕があった。
そして…肌色?!
ばっと楓は上を向く。