幕末異聞
「おい!!もしかして、お前が昨日入ったって言う噂の女か?!」
耳鳴りがするほど大きな声で楓に話しかける視線の先のモノ。
楓がぶつかったのは、見るからに豪快そうな男だった。
背が高く、とても筋肉質ないかつい男だ。そして…
「あんた…、その縫い痕…」
「あぁ?!これか!!
これはな〜、ムカつく男と喧嘩した時に腹切ってみろって言われてな。武士としてこのまま引き下がる訳にもいかねーと思ったんだよ!んで、斬っちまった!
いや〜、あの時は死んだかと思っていたがなー!
今となっては名誉の傷跡だっ!
がはははは!!!」
「…はぁ」
男の腹部に残る傷跡の武勇伝を一通り聞かされ、なんと反応していいものかと困っていたところに助け舟を出してくれた人物がいた。
永倉だ。
「さーの!楓が困ってるじゃねーか。まず自己紹介しねーと!」
ぽんっと男の背中を叩き、落ち着くように促した。
「おおっ!新ぱっつぁん!!そうだったそうだった!!!」