幕末異聞
「なんだか賑やかだと思ったら帰ってたんですね!平助」
廊下からはまた人影が見えてきた。
月明かりに照らされたのは微笑む沖田の顔であった。
「総司!いや〜久しぶり!元気だった?!」
「あっはは!平助、おかえりなさい。久しぶりって、あなたが出て行ってからまだ十日くらいしか経っていないじゃないですか」
「あれ?そうだっけ??まぁいいや!
それより総司。俺おミツさんから総司に渡すもの預かってきたんだ!」
「おミツ?…想い人か?!」
楓は思いっきり目を開く。
藤堂と沖田は一瞬きょとんとしていたが、次の瞬間には同時に噴出した。
「ぷ……うわっはははは!!!
何言ってんだ楓?!総司に想い人なんているわけねーだろ?!!」
「はっははははっ!!楓らしからぬ言葉ですね!
鳥肌立ちましたよっ!!」
「ブッ転がすぞ?!」
「まあまあ、確かに、楓がおミツさんを知るはずがないよな。
おミツさんっていうのはね、総司の姉上なんだ!」
「なんやあんたねーちゃんいたんか」
「はい!私は末っ子なんですよ」
沖田には、二人の姉がいた。
幼い頃に両親を亡くした沖田は姉の一人、みつに育てられた。
現在みつは、沖田家の婿養子となった沖田林太郎と共に武州で暮らしている。