ディア フレンド
アタシの力
キーンコーカーンコーン。
6時間目が終えるチャイムが鳴り響く。その瞬間、生徒は一斉に教科書を鞄に入れ始めた。アタシも革製のバックに教科書類を入れる。
意外と今日は教科が少なかったな。今日は緊張したけど、凄く楽しかった。
アタシは無意識に鼻歌を歌っていた。そして、それに気付いた紗羅が肩をポンと叩く。
 
「やけにご機嫌だね。楽しかった?」

「うん、緊張してたけど少し馴染めたかな♪」

「良かったね。あんた部活はどうすんの?今からじゃ、中総体まで時間ないから・・」

今のとこ部活に入る気はない。修行とやらが多分キツイと思う。何をさせられるのかまだ理解どころか知らされていないからだ。

「入らない。だって中総体出てもいい結果出なかったら意味ないし・・・」

紗羅は首を軽く傾げる。そして、息をつくとポンと頭を叩かれた。
アタシは咄嗟のことで避け切れなかった。
いつもなら避けれるのに・・・

「あんたは変わらないね。じゃあ、あたしは部活行くから。バイバイ」

紗羅は笑顔で手を振ると遥妃と一緒に教室を出て行った。なんか、寂しいな―。
アタシは教室のドアをしばらく見つめる。すると、今度は渉がアタシの前に来た。
心配そうにアタシを見下ろす。こんなに渉って背高かったっけ・・・?

「どうしたんだよ? 暗い顔してさ・・」

「―ううん。渉も部活でしょ?頑張ってね。アタシ先帰って晩ご飯作ってるから。」

「あ、ああ。今日は―、ハンバーグがいい・・・」

頬を赤くしてちょっと上目遣いになる。少し可愛い表情。アタシは息をつくと、
人さし指でツンと渉のおでこを突く。渉は痛そうにおでこを抑える。

「いてぇ・・俺がリクエストしちゃダメなの?」

「―わかったよ☆美味しいの作るから、じゃバイバイ」

アタシは小走りで教室を出る。一気に階段を駆け下りると靴棚には有李栖がいた。
有李栖は驚いたようにアタシの顔を覗き込む。
アタシは少しだけ上がった息を整える。

「一緒帰ろう? 修行のホントの目的も聞きたいからさ。」

有李栖は良いですよと言う。そうして、玄関を後にする。校門を出るまでは有李栖は何も喋ってくれない。沈黙のまま坂を下りる。
坂を下り切ったところで有李栖が口を開く。その表情は真剣そのものだ。

< 11 / 182 >

この作品をシェア

pagetop