ディア フレンド
「杏南は隣城家の本当の使命を知っていますか?」

急にアタシの顔を真っ直ぐに見つめる。その視線にアタシは目を離せない。
いや、離すコトを許されないような視線なのだ。

「本当の使命? 何・・それ、」

「―時代は遡ること平安時代。隣城家と皆藤家はある関係で結ばれていた。それは貴族と陰陽師。杏南は陰陽師についてどのくらい知っているのですか?」


「えっと・・・占いとか術とかしていたくらい・・後は妖怪封じ?」

有李栖の表情は少し緩む。そして、また真っ直ぐを見つめ続きを話し始める。

「それくらいで充分なのです。その陰陽師に当るのが隣城家。陰陽師は妖怪を封じる使命と遣えてる皆藤家を守ると言う使命がある。それが何百年と続き、今も続いてるの」


は? 妖怪? 皆藤家を守る? アタシはそのために来たの?
って言うかアタシにそんな能力なんてない! 第一、妖怪なんて見たことがない。
そんなものこの世に存在しない!! そんな妄言を信じろと?

「信じられないのでしょう。でも、事実。貴方は今年で八代目。今日から戦う準備をして貰う。いい?」


何故か有李栖の口調が大人っぽくなっている。それもそれで怖い。でも、1番怖いのは
誰かに見られている気配を感じること。それも1つではない。
10・・・20・・いや、もっと・・・・

「今、感じる気配は全て妖怪【スポク】の物。修行を積めば見える・・・いや、もう直ぐ見えるようになる。クスクス・・・」

有李栖が不気味に笑う。アタシは本能的に悟る。これは・・・有李栖ではない。
アタシは必死に平常心を保とうとする。それとは裏腹に心臓は早くなる。
汗もじんわりとかいて来た。

「あなたに拒否権はない。さぁ?そうこうしてる家に家に着いた。裏庭で修行をする」

前を見ると大きな屋敷。皆藤家に着いた。緊張で気付かなかった・・・
有李栖はアタシの前を歩く。アタシは誘われるかのようにその後を着いていく。
少し歩くと庭一杯に色とりどりの薔薇が広がる。
有李栖はそれを気にせず、中央で立ち止まる。アタシも反射的に止まる。
すると、ゆっくりアタシのほうに振り向く。そして、また口を開く。


「貴方が信じられないなら見せてあげる。精霊を、ね?」

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