月夜の散歩
エレベーターが最上階で止まるのを見届けると冬夜は携帯を取り出した


慣れた手つきでボタンを押し電話をかけた


「俺だ……通りのマンションの前だ…来てくれ…ああそうだじゃあな」


迎えの車を呼び最上階を見上げた


「最上階か…」


高級マンションの最上階に住み夜中に1人で散歩する女子高生


そして何か闇を抱えている


あいつは顔が笑っていても目が笑っていなかった


瞳の奥に暗い闇が見えたような気がした


何か抱えている…


俺はその闇に捕らわれたのかもしれない


冬夜の前に黒塗りのフルスモークの高級車が止まる


助手席から男が降りて後部座席のドアを開けた


「いい話しは出来ましたか?冬夜」


クスリと笑ってドアを開け秦が言った


「ふっ…まあな…あいつは…陽菜を俺の女にした」


「本気で?」


「ああ本気だ…だから頼んだぞ」


「わかりました」


2人が車に乗り込むと静かに走り出し朝焼けの街へと消えて行った
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