時空奏者



「それでは、明日
見取り図を作ってきます」



精一杯のリンの優しさ。

じわんと胸に広がる
優しさの次にふと思った事。


―――これが
もしエレンだったら…


「あー?
なんで、あたしがわざわざアンタのために
見取り図なんか作んなきゃなんねぇの?

こんなん1日で覚えろよ米粒頭が」


とでも言うんだろう。


考えただけでムカつく。


「…本当にありがとう」


ホールを出て
運悪く調整中のエレベーターに
軽く泣きそうになっていたハルカ。


―――横っ腹ヤバいんだって!
悲鳴上げてるから!!
ハルカちゃん、お願いだから
もう動かないでって言ってるから!!


「もうそろそろ夕方ですが、
ハルカ様はどうなさいますか?」

そんな事をリンが聞いたのは

ハルカが何とか階段を上りきり
玄関横から出てきた時だった。


「え?」


視界にまず入ってきた玄関は
オフィスビルのようで
ガラスはとっても
綺麗に磨き上げられていた。


そしてそこから射す光は
とても綺麗な赤色。



「あ!!もうこんな時間っ!?
多分お母さんも心配してるし、
今すぐにでも帰りたいけど…」



―――そして記憶から
抹消しちゃいたいけど…!!



「…エレン様はハルカ様に
本っ当に、何ひとつ
ご説明されてなかったんですね……」



はぁとため息をつくリン。



「……何を?…え?」


いきなり歩き始めた
リンの背中には

うっすら怒りの色が見えた。


何も言わなくなってしまった
リンの後を付いていくハルカ。


そしていつの間にか
廊下の奥まで行っており
エレべーターに乗り込む2人。




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