時空奏者
リンもその場所には触れなかった。
―――カグラさんって、何者…?
植物に囲まれた中にあったのは
上へと続く階段だった。
「う、上って何があるんですか?」
―――そしてあたしは一体
どうなるんですかっ!?
「上は俺達個人の部屋だ」
カグラは俺「達」といった。
もちろん、「俺達」というのは
ほかにもまだ、仲間がいるということで。
その中にはどんな人が何人いるのか。
……エレンは、ロウは、リンは
そこに入るのか。
そんな疑問にカグラが答えるはずもなく
ハルカに背を向け
急ぐわけでもなく階段を上っていった。
それを階段は、少し笑うかのように
カグラの落ち着いた足音を鳴らし
はっとしたハルカも
慌てて後に続いたのだった。
階段を上りきり
ハルカの目にまず入ってきたのは
左右に続いた廊下。
そして立派な扉を構えている部屋。
その部屋の右隣にも左隣にも、
また部屋があり
やはり立派な扉が構えている。
―――なんなの、ここは…
「こっちだ。入れ」
そう言って階段の右斜め奥の扉を開ける。
「…お邪魔します」
中に入ると至って普通。
部屋の中央にソファがあり
部屋の端の方には小さな本棚と机。
普通といったら普通。
ただ、この部屋が
ありえなく広いということ以外は。
―――あたしの部屋の3倍はあるよね…
感嘆のため息が出るハルカ。
「ソファにでも座って」
「あ、はい」