Time is gone
そんなことを考えながら歩いていると、左肩が何かにぶつかり、続いて、イタイッ、という甲高い声が響いた。
「すみません、ボーっとしていて」
シャネルのロゴが大きく刺繍された黒のバックを提げた女は、一瞬、不快感を顔の表面全体に浮かべ、次の瞬間、少し下品な笑顔に切り替えた。
「いえ、私も携帯を見ながら歩いていたので」
こいつは、プロの女だ。
俺は瞬時にそう悟った。そういう女に慣れているわけではない。むしろその逆であるからこそ、そう思ったのだ。
ヒールがコンクリを打つ、コツコツ、という音を残し去り行く女を振り返ると、やはり、『ストロベリーリップ』と書かれた看板の店に消えて行った。
サラリーマンと風俗嬢、金を払えばそこには偽りの愛が、人と人の繋がりが生じる。だがこの街にいると、ただ肩がぶつかっただけで思う、
〈きっと彼女ともどこかで繋がっていく〉
と。
それはまたこの広い大都会で巡り会うとか、客として彼女の店に行くということではない。もっと人として、その人が歩む人生のどこかで繋がっていく、という意味だ。
「すみません、ボーっとしていて」
シャネルのロゴが大きく刺繍された黒のバックを提げた女は、一瞬、不快感を顔の表面全体に浮かべ、次の瞬間、少し下品な笑顔に切り替えた。
「いえ、私も携帯を見ながら歩いていたので」
こいつは、プロの女だ。
俺は瞬時にそう悟った。そういう女に慣れているわけではない。むしろその逆であるからこそ、そう思ったのだ。
ヒールがコンクリを打つ、コツコツ、という音を残し去り行く女を振り返ると、やはり、『ストロベリーリップ』と書かれた看板の店に消えて行った。
サラリーマンと風俗嬢、金を払えばそこには偽りの愛が、人と人の繋がりが生じる。だがこの街にいると、ただ肩がぶつかっただけで思う、
〈きっと彼女ともどこかで繋がっていく〉
と。
それはまたこの広い大都会で巡り会うとか、客として彼女の店に行くということではない。もっと人として、その人が歩む人生のどこかで繋がっていく、という意味だ。