幕末異聞―弐―
「随分派手にやったみたいですね。沖田組長」
穏やかな日の光を反射してキラキラと輝く鴨川の水面には、二つの影が映りこんでいた。
「ええ。随分派手にやらかしました。多分帰ったら土方さんに大目玉食らっちゃいますよ」
影の正体は、適当な小石を二つ手に取りお手玉のようにして遊ぶ沖田。
「ふふ。山崎さんとこうしてゆっくり話すのは初めてかもしれませんね!」
にっこりと沖田が笑顔を向けた先には、もう一つの影、監察方の山崎がいた。
「そうですね。普段からあまり昼の町を歩きませんから」
「それは勿体無い!昼の町は夜とは違った活気があっていいですよ!今はまだ焼け跡が目立ちますけど」
河川敷から町を見渡した沖田は、少し残念そうに笑った。
「…驚きましたよ。永倉隊長が急いで打ちみと切り傷に効く塗り薬をくれって言ってきはるんで、一体何事かと思いました」
河川敷にしゃがみ、適当な小石を手に取り、手の上で遊ばせている山崎が苦笑する。
「…何でこんな時期にあんな事をしたのかって聞きたいんでしょう?」
「…監察方の性分ですわ。引っ掛かる事があると、調べずにはいられんのです」
「あはは!調べる必要なんてありませんよ。きっと貴方の予想は大方当たっていますから」
まるで、山崎の言いたい事全てを見切っているような口ぶりをする沖田に、山崎は吊り気味の目を丸くした。
「……松本先生から何か聞いたんですか?」
「いいえ」
「じゃあ、土方副長から?」
「残念、違います」
「では…どうやって赤城の左腕が利かないと?」
珍しく表情がくるくると変わる山崎を嬉しそうに見ていた沖田は、一瞬考えるような素振りを見せたが、すぐにまた笑顔に戻る。
「だって全然違うじゃないですか?」
「…全然?」
当たり前のように言う沖田に、山崎は首を捻る。確かに、最近の楓は持ち前の運動神経に頼るだけの剣ではなく、剣術に則った動きをするようになった。だがそれは、永倉が苦労して教えたものだと思っていたし、第一、戦法を変えても全く戦闘能力に衰えがなかったのだ。それでは誰一人変化に気づけるはずがない。