幕末異聞―弐―
「楓!!」
スパッと耳に響くような鋭い音をたてて襖を開けたのは、血相を変えた原田、永倉、藤堂、山野、浅野だった。
「何なん?そんな大勢で入って来んな」
気だるそうに流れ込んできた五人を睨みつける楓。その傍らにはいつものように大刀と、見慣れない藤色の小さな風呂敷包みが置かれていた。
「馬っ鹿!お前なに悠長に座ってんだよ!?今お前の事で屯所中が大騒ぎなんだぞ!!」
「除隊って本当ですか?!」
「赤城、理由は?!!」
各々楓に好き勝手に詰め寄る原田、山野、浅野。眼前で不安そうな顔を見せられて、怒っていたはずの楓も苦笑してしまった。
「除隊はほんまや。理由は…別にどうでもええやろ」
ふうっと鼻で息をついた楓の顔を三人は落胆の表情で見つめる。隊内に広まる噂は本当だった。信じたくない事実がたった今本人の口から直接聞いてしまった永倉、藤堂も三人の後ろで肩を落とす。
「…も、いいわけないだろ」
「あ?」
「どうでもいいわけないだろっ!!何でお前が除隊なんだよ!お前がいなくなったら俺たち…新撰組はどうするんだよ?!」
三人を掻き分けて、藤堂は必死で楓の肩を鷲掴んだ。
「はは。何今にも泣きそうな顔しとんねん?隊士が一人抜けたぐらいでどうもならんやろ。大げさすぎやで」
縋るように肩に体重をかけてくる藤堂を、楓は振り払う気になれなかった。
「どうもならないわけないだろ」
少し離れた場所で黙っていた永倉が始めて口を開く。
「まあ,うちが抜けたら戦力は落ちるやろな。でも、平助が隊士募集に江戸まで行くんだったらすぐに補充さ「そうじゃない!!」
肩に乗せた指に一層の力を入れた藤堂が、楓を前後に揺する。激しくぶれる楓の視界には目を潤ませた藤堂の顔が映った。