幕末異聞―弐―
「…楓、貴方は勘違いしてる。確かに、私があの時もっとしっかりしていれば貴方は怪我をしなくて済んだかもしれない。その悔しさはいつも抱えています。でも私は自分の沽券を考えた事なんてない!」
今まで楓が見たことのない沖田の様々な非哀の表情。声を荒げて主張する言葉に嘘偽りが無いことは楓には十分伝わっていた。
「じゃあ、うちを除隊させたいあんたの真意は何や?!」
楓でも斎藤ですらも読み違えた沖田の心の内。それを聞かずして楓の怒りが収まるはずはない。
「そ…それは……」
突然言葉が出なくなった沖田に更に苛立った楓は玉砂利を蹴散らしながら沖田に近づき、思いっきり胸倉を掴んだ。
「言ってもらわな納得できん!!」
グッと自分の身長に無理矢理合わせるように、沖田を自分の顔の位置まで引っ張る。明かりが無くても鮮明に表情が見える位置まで顔を近づけた。
「貴方には生きていて欲しいからです!」
「だから!それは自分のせいでうちが死ぬのが嫌なんやろ?!
除隊させればもう自分の目の届くところで死ぬのを見ないで済むからやろ?!!」
「それは違うっ!」
「違くないやん?!」
「生きて欲しいっていうのはそういう意味じゃない!!!」
「じゃあ何「大事だからですっ!!」
沖田は楓の言葉を遮り、胸倉を掴み返し更に顔を近づけた。
「楓を大切に思っているから…激しい戦が始まる前の今ならまだ間に合うから。生きて私たち新撰組を覚えていて欲しいんです。例え隊士が全滅しようと、誰かが覚えていてくれればそれがみんなの希望になるから。新撰組の生きた確かな証になるから…」