猫になって君にキスをして
12。Tバックとピンヒールの黒い涙

12。Tバックとピンヒールの黒い涙
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婆さんを見送って、ガゴンっと閉まった扉の銀色に白い猫が映っている。


「にゃ!」


ビックリしたが、そこに映っているのは自分なんだということに気づいて肩を落とした。


……そうだよな。

オレ、猫だったんだ。


すっかり猫慣れしちまって……、しかも意外と人間も相手をしてくれて……、忘れかけてたぜ。


ひょっとしたらこのまま、自分が実は人間だという事までじょじょに忘れていってしまうんではないか……。


「にゃ、にゃにゃ!」


ふと過ったその考えに、オレはブンブンと首を振った。

振ったと同時に電車が動き出した。

弾みでゴロンとコケた。

コケたというより、振った首の反動で、そのまま右方向へ転がった。

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