隠す人
「ウゥ!」
ノリのいい西刑事は胸を押さえ、身を屈める。
「バン!」
2発目。
「ア゛ァ」
西刑事、撃たれた衝撃でふんぞり返る。
「バン!」
3発目。
「グヘッ」
西刑事、膝を地につきくずおれる。
「…と、このようにだな、普通は複数の銃弾を浴びれば体勢が変わっていくから、入射角度は変わっていくものなんだ」
「なるほど。それが変わってない、ということは…」
「一島社長は、撃たれている間、ずっと立っていたことになる。しかも、背中を犯人に向けたまま」
「うーん」
「西、これはどういう事だと思う?」
西刑事は、脳内のシナプスを全力投入して考える。
で、考えた結果が
「…社長は、究極のドMとか?」
「・・・お前に聞いた俺が、バカだったよ」
原田刑事は、ガックリと肩を落とした。
「俺はこう見ている。犯人は、二人いる。銃を撃った実行犯と、部屋の中で社長が逃げ回らないように、押さえつけていた共犯者」
「・・・その共犯者が、二宮?」
「何かの理由で二人は仲違いし、二宮が口封じのため昨夜、襲われた。・・・まぁ全ては、状況証拠に基づいた仮説に過ぎないが」
原田刑事は、少し離れた場所で打ち合わせをしている二宮を、鋭く睨んだ。
「二宮・・・お前が何を隠していても、必ず暴いてみせる!・・・あれ。おい、西」
原田刑事が、二宮を指差した。
「あいつ、二宮じゃねぇぞ」
二人が二宮だと思って睨んでいた男は、よく見れば二宮をちょっと残念な感じにした別人だった。
「ありゃあ二宮イマイチじゃねえか、バカヤロー!」
「しまった、また撒かれた!」
西刑事は、頭を抱えた。