Sweet silent night
「その代わり、雨がもう少し小降りになるまで付き合ってくれません?」
あー、なるほどね。
そのとき頭の中で今まで張り詰めていた何かが、ぷっつり切れる音が聞こえた。
…もうどうなってもいいや。
「いいですよ。
どこに連れていってくれるんですか?」
口の端を上げて、上目遣いできいてやった。
我ながら開き直った女は怖いと思う。
そういうとそれを合図に彼は傘を反対の手に持ちかえて、私の手を取り答えた。
「とりあえず車のとこまで行きましょうか。
近くの駐車場にとめてあるんで」
クリスマスイブの夜にナンパだなんて…
相当軽い人なのか、何かの営業なのか。
まあそれにいとも簡単についていく私も私なのは間違いない。
傘に落ちて弾けるうるさい雨音を聞きつつも、内心そんなことを思いながら駐車場までたどり着き、彼の車の助手席に乗り込んだ。
…赤いポロか。
同年代にしたら大人びた趣味をしてる人だなと思った。