『約束』、
「分かってる!分かってるさ!」

谷口は両手を頭に押さえ、

眉を八の字にして叫んだ。

「何故、人は最も大事な時に無力なんだろうね…。」

由美ちゃんは

右手のツメをいじりながら、

ボソッと口にした。

「俺は…俺は、吹雪にいったい何が出来るんだよ……。」

谷口はわれを

忘れたかのように

本当に混乱状態で

頭をくしゃくしゃにして

独り言のように言った。

「私が思うに、人が今の状況みたいに無力になっちゃうのは、ひとりぼっちなんだからと思う……。いったい何ができるか、じゃなくって、ただ今まで通り吹雪ちゃんのずっと近くにいたら吹雪ちゃんは一番安心できるはず……。谷口、アンタは吹雪ちゃんの事好きならば尚更ね。」

由美ちゃんは

谷口に優しく

言い聞かせた。

谷口はそれをまだ

混乱状態で聞いていた。
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