コーヒー溺路線
コンビニエンスストアで買った缶ビールは今冷蔵庫で冷やしている最中だし、こんなに早い時間から酒を飲むのは気が進まないという和人は、俊平にはココアを、自分にはコーヒーをいれた。
彩子と話すことができるようになった俊平はコーヒーをあまり飲まなくなっていた。
それは彩子のいれるコーヒーしか飲みたくないという心情の表れだったのか。あるいは最近彩子が警戒し始めてから、コーヒーを飲むと彩子のことを思い出して虚しくなるからという心情の表れなのか。
それは和人には解らない。
しかし元は苦いコーヒーよりも甘いココアが好きな俊平のことを知っていることもあり、和人はココアを一つのマグカップに並々と注いだ。
自分はあまり大きくないコーヒーカップにインスタントのコーヒーをいれた。
「俊平」
「ありがとうございます」
和人がココアの入ったマグカップを俊平の目の前に差し出した。
苦しかった首元を解放させた俊平は先程より幾分顔色が良いようだった。
それを見て安心した和人はようやく俊平の座る真向かいに腰を落ち着けた。
マグカップを受け取った俊平は和人の久し振りにいれるココアを堪能しているようだった。それを見た和人は、甘い匂いと濃厚なミルクが堪らなく好きなのだと力説していたいつかの俊平を思い出していた。
「旨い」
「そうか。俺はココアを飲まないからちゃんと一袋分全部お前が飲めよ」
わざわざそう言った和人がなんだかおかしくて俊平は少しだけ笑うことができた。