コーヒー溺路線
「和人先輩」
俊平がぽつりと呟いた。和人はコーヒーカップに付けていた口を離し、そっと硝子テーブルの上にコーヒーカップを置いた。
俊平は再び俯いて黙り込んだ。
和人はそんな俊平を急かすこともなく再びコーヒーカップに口を付けた。
和人の変わらぬ反応に俊平は泣きたい気持ちになった。
「和人先輩、聞いてもらえますか」
「……ああ、もちろん」
自分から出た声が思っていた以上に情けないことに俊平は唇を噛んだ。
俊平は不安になって和人を一瞥したが、和人はベッドに背をもたれて腕を組み、目を伏せていた。ああ、恥ずかしいことは何もないのだと俊平は思った。
俊平はマグカップの半分程の量になったが未だ熱いままのココアを少しだけ啜り、喉の渇きを潤した。
喉と唇が異常なまでに渇くのだ。
「……」
「……」
「俊平」
「はい」
なかなか話し出さない俊平に、和人は目を伏せた状態のまま話し掛けた。
俊平はおろおろとしながら返事をした。
「俺はお前を怒りはしないし、咎めることもしない。ただ黙って、聞いていてやるから」
だからゆっくりで良い、和人は最後にそう付け足して言った。
俊平はマグカップを傾けて熱いココアをもう一口飲み、長い話になるだろうと思い足を少し崩して楽にした。
和人は相変わらず目を伏せたままだ。