コーヒー溺路線
奈津が目を伏せて黙った以来、靖彦も黙ったまま日替わり定食が運ばれてくるのを待った。
お待たせ致しましたと、先程注文を取りに来た店員とはまた違う店員が日替わり定食の乗った盆を両手に抱えていた。
「今日も旨そうだ」
「い、頂きます」
今日の日替わり定食は海老フライやポテトサラダ、吸い物に南京の煮物、そして苺が三個という家庭的なメニューだった。
奈津はゆっくりと吸い物に口を付けた。
猫舌なので少しだけ息を吹き掛けて冷まそうとする。そんな奈津を見て靖彦は微笑んでいた。
「美味しいっ」
「旨いだろう、ここの日替わり定食は何でも旨いんだ」
靖彦につられて奈津も口元が緩む。
それからは互いに黙々と食べ始めた。
「ふう」
「腹いっぱいになった?」
「とても」
食べ終えた奈津にそれは良かったと靖彦が声をかけた。
あまりの美味しさにぺろりと平らげてしまったので、奈津は少し腹がきついなと思った。これでは午後からの仕事は睡魔と戦わなければならない。