妖怪外伝百鬼夜行

「話を聞こうか、宮川」

烏丸はその眼を千夜に向けた。誰もが耳にした。
千夜の叫んだ言葉。


『お姉ちゃん』――……


「お前の目的、聞いてもいいか?」

「……」

千夜は閉ざした重い口を開く。どうせ最終的には話す事になるものだ。



「私にはお姉ちゃんがいるの。年の離れたお姉ちゃん」


千夜には姉がいた。名前は小夜子。
11歳ほど年の離れた姉がいた。


いつも千夜を守り、支え、励ましてきた立派な姉。
だが、千夜がその姉と共に過ごしたのはたった7、8年しかなかった。
小夜子が高校を卒業した日、卒業式が終わった直後、小夜子は失踪した。

それ以来、彼女は見つからない。


阿弥樫高校の卒業生。
卒業後は画家か、ピアニストか、芸術に進むことを夢見ていた姉が消えた。

9年ほどたった今でも、彼女の消息はつかめない。
彼女を探す目的で、千夜は阿弥樫高校に入学した。

卒業式にどうして彼女が消えたのかを知りたかったから。

そこで聞いたのが、学校の七不思議。
その怪談が生まれたのは、小夜子が失踪した時からだ。

戻ってくる絵画も小夜子が描いたもの。
聞こえてきたピアノの曲も小夜子がよく弾いた彼女お気に入りの曲。

さっきの声だって小夜子の声そのもの。


もう、この学校の七不思議は偶然では済まされない。
この学校の七不思議には、小夜子につながる何かがあるはず。



千夜はたった今、確信した。
七不思議のすべてを解明して、姉を見つけ出す。そう決心した。


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