妖怪外伝百鬼夜行
シャワー室は長らく封鎖された割には小奇麗だった。カビもない。嫌なにおいもない。
それどころかシャンプーの匂いがかすかにある。使用されていることが明らかだ。
「……」
四人は懸命に何かを探す。
あんな仕掛けを作ってまで隠したいものがあるのか。それは何か。
だがそれは思ったよりも簡単に鳥介が見つけた。
「長い女の黒髪発見」
「使っているのは女か……」
小夜子の物だろうか。だとしたらシャワー室は小夜子が使用していた物。
まだシャンプーも石鹸も使用されてそれほど時間がたっていない。もし小夜子が使っているのであれば、まだ彼女は生きて無事ということか。
千夜はほっと胸をなでおろす。
姉が少なくとも元気でいることが分かったことに対する安堵だ。
可能性がだんだんと見えてくる。
小夜子生存の可能性。小夜子が生きてここにいるという可能性。
もしそうだとしたら、彼女は失踪してから今まで、約9年もの間この校舎にいたということになる。この学校に居ながらにして、この学校にすむ小夜子に気付かなかった。
彼女はいったいどうしてこんなことになったのだろう。妹を置いてこんなところにすみつくとは考えにくい。ならば自然と思い浮かぶのは誰に学校に閉じ込められた。
ああ、
だから千夜はこうも必死なのだ。
烏丸は深く考え込む。学校に住ませることができるのは学校関係者のみ。
「音楽室の鍵を取り出せる……となると」
音楽室などの教室の鍵はすべて職員室に管理されているはず。
それも、壁に取り付けられた鉄の箱の中にかけられている。それは暗証番号でロックされており、その番号を知るのは教員のみ。
「教師が……学校に女を監禁?」
まさかとは思う。
だが、それしかもう考えられないのだ。
些細な七不思議の調査が、とんでもない事件と関係してしまった。
残りの七不思議を調べれば、犯人が分かるかもしれない。
調査はそのまま続行する。