妖怪外伝百鬼夜行
「奥から二番目だったな」

問題のトイレに到着し、四人は全員トイレに入る。
この時間ではもう男も女も何もかもが関係ない。堂々と烏丸と東が入った。
だが探しても探しても、奥から二番目の個室のトイレには、何もない。

「……何にもねぇな」

「別の個室も調べますか?」

どこを探ってもなにもない。深くため息をつくが、どうにもならなかった。
陽が別の個室を調べることを提案し、そこから烏丸は考える。

今まで調べた七不思議はすべて、起きてしまった事だ。
音楽室も、小夜子と思わしき女性がピアノを弾いたことから噂された。
嘆きの声も、彼女の泣き声がそれである。絵画を戻したのは、それを捨てられたくないからという理由だろうか。シャワー室は小夜子が使用していたから。
すべてやむなく発生した。紅い火蒼い火もそれである。
一人の女を学校で監禁。その秘密を隠すためにこの七不思議があるとしたら?

トイレの花子さんは、奥から二番目の個室にいる。そんなウワサ。
だがこれは、今までの七不思議の中でも、どこか確実だと言いきっていない。『らしい』というものである。
わざと流したウワサだとするならば、


「一番奥の個室。そこを重点的に調べよう」

「へっ?」

一番隠したい物はその噂が立てられてから極端に使用される機会を失った場所。
さらに奥のトイレなど誰も行きたがらない。興味本位で行くとしてもそれはウワサの場所である奥から二番目。誰も一番奥に注目しない。誰も行こうとは思わない。

本当に隠したい物は一番奥の個室にあるのではないか。
早速と、烏丸が一番奥の個室を入念に調べ始めた。

壁のタイルに触れ、じっと目を凝らす。そしてその時、何か違和感を感じた。
頭上から吹き下ろす空気の流れ。もしかしてと目線を上げる。
天井には通気口がついている。男の手ならギリギリ届きそうだ。

「……よっと」

通気口を開けた。だが小さく、翼が邪魔で烏丸には無理だ。
仕方なく、陽に通気口に入ってもらうことにした。
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