二 億 円
「ふえ?」
彌生、と呼ぶこと?
思わず拍子抜け。
その一その二がかなりの衝撃だったせいか、その三はかなり軽く感じる。
ほっ、としたのもつかの間。
彌生さんは追い討ちをかける。
「さん、とかつけるのも駄目ですからね?彌生、と呼ぶこと。それと、もし客人が来ても決して声は出さぬこと。良いですね?」
むちゃくちゃだよ。
内心呆れながらも、従うしか道がない。
「はい…わかりました。」
嗚呼、厄介な人に買われてしまった…
まあ人間オークション会場にまともな人が来るなんてないだろうけど。
「はあ…」
思わずため息が漏れる。
「ふふ…美しいですね、ひなた。」
…はい?
うっとりとした様子でこちらを見つめる彌生。
一体何に対しての言葉なのか全く理解できなかった。
「ひなた…
貴女は不思議な魅力の持ち主です。
貴女の悩ましい姿を見ると、
胸が高鳴ってしまう…
他の人間にはそのような感情、
一度も抱いたことなどないのに…」
苦しそうな表情で私を見つめる彌生に、妙に胸がざわつく。
なんだろう…この胸のざわつき。
「ひなた。」
「は、はい…」
「もっと、見せてください。
貴女の悩ましい姿。表情。
そして、もっと私を
楽しませてください。」