Love Water―大人の味―




ため息をひとつついて、パソコンの画面を見つめる。



何か仕事をしよう、と思うのに手が動かない。



ただ画無機質な画面を見つめるだけ。



これじゃあ、残業をしている意味がない、なんて思いながらも体はいうことを聞いてくれない。



そして、ふと見上げた窓の外では雨が降り出していた。



窓をたたく雨音。



朝はあんなに晴れていたのに。



気づかないうちに空はどんより雲っていて、だんだん激しさを増していく雨。



……やっぱり帰ろう。



梨華が帰ってから30分しか経っていないけど、集中できないし、ほうけているだけなら残業をしている人達に失礼だ。



バックに荷物をつめて立ち上がる。



「あら、雨衣ちゃん帰るの?」



「はい、お疲れ様です」



フロア内ですれ違う先輩に笑顔で言葉を返す。



先輩はなんにも知らない。



あたしが彼にフラれたことも、部長の部屋で一晩過ごしたことも。



そう思って、彼のいる奥のデスクを見る。



しかし、部長はいなくイスはからっぽだった。



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