Love Water―大人の味―




ほっとしたような、寂しいような複雑な気分。



そうしてエレベーターに乗りながら気づく。



……寂しい、って。



思わずボタンを押す手がとまってしまう。



あたしは、何を考えているのだろう。



寂しいだなんて、部長に対して使う言葉ではないでしょう?。



彼に……別れた彼に対して、思うことでしょう?



首を振って『1』のボタンを押す。



自分が、何を考えているのか分からない。



そもそも部長の姿を探すこと自体、いつものあたしじゃない。



自慢じゃないけど、あたしは他の女子社員みたいに部長にお熱ってわけではない。



どちらかといえば、彼に対しては冷めてた方。



仕事が出来るのは尊敬するけど、あの無表情が気に入らない。



昨日も、ほとんど表情変えなかったし。



だからよ。



だから、彼のことを考えちゃうのよ。



そこらへんの男と違うから。



それに、昨日優しくしてもらって迷惑もかけてしまったから、彼のことを考えてしまう。



これは当たり前のことなのよ。




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