Love Water―大人の味―
改めてて桐生部長の部屋を眺めてみる。
昨日は若干とはいえお酒が入っていたから、部屋の景色なんてうろ覚えだし、今朝も遅刻しそうで朝食を頂いたらすぐに部屋を出たから、じっくりと見るのは今が初めて。
(……けっこう、汚い)
寝室と同じように、黒と白、ブラウンなどのシックな色の家具で統一されたリビング。
男の部屋にしてはなかなかきれいな方だけど、あたしからすればまだまだ。
部屋着らしきものは脱ぎっぱなしでソファーにかけられてあるし、フロアは仕事の書類が散らばっている。
足の踏み場があるだけまだましだ。
それに、昨日寝室を見た限り汚いのはどうやらここだけみたいだし。
「何突っ立ってんだ。
コーヒーはこっち」
「あ、はいっ」
リビングのドアの前に立ったままだったあたしを、部長が奥のキッチンから手招きする。
書類に向いていた目を上げる。
あたしの部屋の造りとほとんど同じだな、なんて思いながら彼のもとに向う。