Love Water―大人の味―
漆黒の瞳に、真っすぐに見つめられる。
そんなに見つめられたら……。
「上司命令だ、と言ったはずだが」
「はい、失礼なのは十分承知しています。でも……」
やっぱり怒られるのか、と思いながらもここで食い下がらなければ終わりだと思って負けじと彼の瞳を見つめ返した。
しばらく無言の見つめ合いが続く。
周りは改札の前で止まったままのあたし達を、眉を寄せて邪魔そうに通り過ぎる人達。
時間だけが、ただ過ぎる。
最初に口を開いたのは、彼だった。
「………じゃあ、」
「はい」
「………上司命令ではなく、1人の男だと思って今夜は付き合ってくれ」
「えっ……」
真剣な瞳と同じく真剣な声。
顔から、少しずつ血の気が引いていく。
「それは、どういう……」
震える声で彼に聞く。
『1人の男』って、それじゃあまるで……。
「デート、しよう」
「………っ」