Love Water―大人の味―




薄暗いエントランスを見回していると、その場に小気味よい音が鳴り響く。



右側に視線を向けると案の定エレベーターが到着した音で、中からスーツ姿の社員が出て来た。



徐々にはっきりするシルエットに、それが男のものだと気づくと途端に気まずくなる。



誰もいないエントランスに1人で座っているなんて、不審に思われるし寂しい人だと思われそう。



早く部長帰ってきてよ……と声には出さず胸の中で叫ぶ。



「………雨衣、さん?」



男のシルエットが近づいて気まずい雰囲気が流れそうになったとき、よく耳に馴染んだ声があたしの名前を呼んだ。



「矢野君……」



戸惑いがちに呼んだ彼は、あたしの声を聞いて「やっぱり」と言った。



「どうしたんですか、こんなところで。

確か8時前には会社出ましたよね?」




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