Love Water―大人の味―
ソファーに座るあたしの横に立って、矢野君は首を傾げて聞く。
「あー…、ちょっと……」
まさかここで知り合いに会うとは思わなくて、何と言えばいいか分からず言葉をにごす。
その様子に彼は不思議そうな顔をした。
「や、矢野君は今帰り?」
詮索されては困ると思って、話をそらす。
「はい。残業やってて……今終わったところです」
「うわー、大変だったね。お疲れ様」
時計を見れば8時30分を過ぎているから、矢野君の残業時間は2時間を超えていることになる。
若いのに頑張るな、と思いながら彼を見つめた。
「雨衣さん、誰か待ってるんですか?」
「えっ!? うーんと……」
また蒸し返した!
わざわざ話をそらしたのに、矢野君はあたしの態度が気になったのか、そう聞いてくる。