Love Water―大人の味―
これで食事の話はなくなるはず……。
「じゃあ、土曜日の夜なら確か……」
「は……」
仕立てのよいスーツの胸の内側のポケットから黒い手帳を取り出した桐生部長は、パラパラとページをめくりながら言う。
それをア然としながら見つめた。
「やっぱり。土曜の夜なら空いてる」
「は、はぁ…」
ここは、なんと返事をすればいいのだろう。
上手くかわしたはずだと思ったのに、まさか別の日に予定をいれるとは。
「部長……、食事をする意味がわかりません」
ついに言ってしまった。
上司に対してこんな言葉、許されないはず。
いっそ、怒ってくれればいい。
なのに。
「……駅でも言ったが、俺は笹本とデートがしたい」
「……っ」
「仕事とか、上司とか部下とか、関係なく」